About

 お客様のヒアリングから、型紙設計、革の裁断〜縫製〜仕上げと全ての工程をひとりで行なっている革工房です…と自信満々に言いましたが、学生時代に建築の道に進んだことと、節操なく自分で何でもやりたい性分が災いして自然と現在の形になったように思います。
 全ての工程を一人で担っていることに加えて、手よりも口が動きやすい性格のため、個人のお客様でも企業でも、具体的なコミュニケーションを重ねてこれから作ろうとするもののイメージを共有していくことができます。革の特性を生かしながら、丈夫で永く使えるだけでなく『おもしろさ』『遊びごころ』を感じられる、そんなもの作りをしていきたいと思っています。
店主兼革職人 上田岳人

〈素材について〉 
 皮革は自分の目で見て選んだ欧州、国内のタンナーの質の良いものを用いています。仕上がった製品を長く使っていく上で大切になる緻密な繊維をもつ革、使っていくほどに美しい艶を帯びていく革、上品な型押しに色の濃淡がある奥ゆかしい表情の革…いろんな魅力を持った革を多数取り揃えています。

 錠前や金具は主に真鍮製のものとニッケルメッキが施されたものを用いています。フルオーダーの製作を進める中で最適な金具が見つからない場合は、真鍮をレーザーカットして作る場合もあります。

〈仕立てについて〉
 まずは縫製ですが、縫う前に革に穴をあけてから糸を通していく『手縫い』と、皆さんご存知の『ミシン縫い』があります。手縫いの良さは、製品の中で革の厚みと負荷のかかり方が異なる部位ごとに最適な力で締められること。そして、手縫いでなければ仕立てられない形があることです。一方でミシン縫いに比べると時間がかかる縫い方です。お客様のご予算や、ミシン縫いの方が適している構造なども考慮して縫い方を判断しています。
 次に革の切り口(コバと呼びます)の仕上げ方ですが、基本的には『磨き』で処理しています。煮出した布海苔でコバを磨き、その後蜜蝋を主成分として調合したものを浸透させます。またその後も磨きを繰り返すことで、丈夫で美しいコバに仕上げています。『磨き』以外にも製品の部位や構造によって、革の先端を折り返して仕上げるものもあります。

 上の二つは伝統的な技術ですが、当工房ではレーザーカットを利用して金具や芯材を加工したり、金型とホットスタンプを使わずに金属箔を押したりなど、様々な加工技術を革製品の製造に生かしています。単純に効率や精度を求める場合もありますが、異素材や多様な加工技術を組み合わせていくことで革の可能性を追求していきたいと思っています。